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036 熱い視線

last update Last Updated: 2025-06-19 17:00:48

「あ、あのその……直希さん、失礼します……」

 夕食も終わり、あおい荘の一日の業務が終わろうとしている頃合いで、菜乃花が直希の部屋へと入ってきた。

「ああ、菜乃花ちゃん。今日は色々とごめんね」

「いえ、そんな……あのその、ちょっとお邪魔してもいいですか」

「うん、勿論。入って」

「それでは……お邪魔します……」

 直希の枕元に座った菜乃花。手には土鍋を乗せたトレイが持たれていた。

「直希さん、その……少しでも食べられますか? おかゆ、作ったんですけど」

「菜乃花ちゃんが作ってくれたの? 助かるよ。薬のおかげで熱も下がったみたいなんだけど、そうしたら急にお腹が空いて」

「よかったです。あのその……座れますか?」

「うん。ちょっと待ってね」

 直希が上半身を起こそうとしたが、力が入らずうまく起き上がれなかった。

 菜乃花が背中に手をやり、ゆっくりと起こす。

「ありがとう、菜乃花ちゃん。まいったな、これじゃ俺、介護されてるみたいだよ」

「ふふっ……滅多に熱が出ない人は、少しの熱でもダメージがあるんですよ。空腹でしたら尚更です」

「だね。こんなの久しぶりだよ。前に寝込んだのって、確か高校生の時……そうだ、受験前でちょっと無理してた時だ」

「じゃあもう、10年くらい病気されてなかったんですね」

「まあ、ちょっと熱が上がることはあったけどね。でも寝込んでしまったってのはなかったかな」

「そうなんだ……直希さん、ご両親に健康に産んでもらったんですね」

「そうかもね、ははっ」

「でもね、直希さん。だからこそ、体調管理はしっかりしてもらわないと。いつも元気な人の方が、こうして突然倒れたりするんですからね。

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  • 【完結】あおい荘にようこそ   199 託す思い

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